糖尿病性腎症について

糖尿病性腎症とは

糖尿病性腎症は、糖尿病が発症してすぐに生じるわけではなく、高血糖の状態が長く続いた場合に腎臓が傷んでしまうことで発症します。腎臓に傷みが生じて腎臓の機能が低下していき、からだの余分な水分や老廃物を尿として排泄する機能が弱まることで、からだがむくんだり、気分が悪くなったりするなどのさまざまな症状を引きおこします。さらに機能低下が進行し末期腎不全に至ると、腎臓の機能を代行する治療である「透析療法」が必要になります。

尿検査を行う意義

腎臓は血液をろ過し、からだに必要なものを残し不要なものは排泄するという機能を持っています。アルブミン(タンパク質の一種)といった成分は、本来からだに必要な栄養素なので、正常な腎臓から尿に排泄されることはあまりありません。腎症となり腎臓のフィルターがうまく機能しないと、こうした成分がとりこぼされて尿に出てきます。尿に出てくるアルブミンが多いほど、腎臓が傷んでいるということになります。

腎機能は血液検査でも測る方法がありますが、より早期に腎機能の低下をキャッチできるのが尿検査によるアルブミン測定です。定期的に尿中アルブミンを測定することで、腎機能の状態を把握することが出来ます。目安としては、尿中アルブミンが30㎎/日(㎎/gCr)を超えると早期腎症期と診断され、この段階で対策を取らないと将来「人工透析」に至る場合があります。

糖尿病性腎症重症化予防プログラム

糖尿病性腎症重症患者の透析導入を問題視し、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議及び厚生労働省は「糖尿病性腎症重症化予防に係る連携協定」を締結し、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定しました。平成31年の改定では、新たに重症化予防に取り組む際の留意点が具体化され、特に尿蛋白・尿アルブミン測定による病期の確定が追加されました。病期(腎症の重症度)を確定することにより、個人に沿ったプログラムの実施が可能になります。

これを踏まえて私たちは、プログラムを実施するすべての方に簡易検査キットを用いて尿中アルブミン量の測定を行っています。また「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」では、減塩を含む食生活の改善も重要視されており、これに沿った「塩分コントロールコース」の実施によって、重症化予防を実践しています。

透析に至るとどうなるの?

透析療法に至ってしまうと、高額な医療費がかかります(自己負担額は一部)。また、例えば血液透析なら、週3回、1回4時間程度の治療時間を必要とし、前後の通院時間も必要になります。今まで通りの仕事、生活を続けることは困難になるでしょう。しかも、透析療法はあくまで腎臓の働きの「一部」を代替しているにすぎず、完全な替わりにはなりませんので、薬に頼ったり、厳しい食事制限を行わなければなりません。そして、腎臓それ自体を治療しているわけではありませんので、生涯にわたって続けていく必要があります。透析療法は、金銭的、精神的にも身体的にも負担を強いられる治療なのです。

糖尿病性腎症の重症化予防のためにできること

糖尿病やその合併症を予防するために、出来ることは以下のようなことが挙げられます。

・血糖コントロールを良好に保つこと

・適正体重(BMI22)を維持し、高血圧や脂質異常による動脈硬化症のリスクを低下させること

この中でも特に重要なのが高血圧を防ぐ事(=減塩)です。

食塩を過剰に摂取すると、体内の食塩量を薄めようと水分が体に保持される為、血液循環量が増え、高血圧の原因になります。高血圧になると、毛細血管の集中した腎臓には高負荷になり、腎臓はダメージを受けます。これにより腎機能が低下し、ナトリウムや水分が尿として排泄されにくくなると、さらに血圧が上がるという悪循環に陥ります。

「減塩」をすることで高血圧を防ぎ、腎機能の改善を目指すことが出来ます。

MYPACEをもちいたプログラムでは、塩分コントロールを中心に、血糖コントロールや体重管理についてもアドバイスさせていただき、食事管理を行っていきます。すでに実践された方では、糖尿病性腎症の進行を食い止めた方も多くいらっしゃいます。改善事例は以下のページをご覧ください。

腎症進行予防プログラム改善事例一覧

医療連携プログラム改善事例一覧